Artists Column

各界で活躍中のアーティストの方々のコラムをご紹介しております。


OGURA TADASHI's New Column

絵画家 / 小倉正志「画人日記」 2008/6/18 Up


2008年 画人日記(第86回)  「液晶絵画 Still/Motion」

場所/国立国際美術館
日時/2008/4/29(火・祝)〜2008/6/15(日)
主催/国立国際美術館、朝日新聞社・朝日放送

















メーション作品で束芋の作風を連想させるように、現代社会と未来への警鐘が動物をモチーフとした展開に巧みに表現されており、この作品のブースには長時間立ち止まり作品を見続けている人が多数おられた。一方ヤン・フードンの作品は、中国の冬の荒れ果てた大地の中を彷徨する野犬の群れ、その様子を捉えた映像から伝わってくるのは、現代の中国の貧富の格差であったり、生と死のリアルな世界である。
 他のアーティストも同様に素晴らしい作品が展示され、あえて自分の主観で挙げるとするなら、この二人の作品になる。
 今回の展示では、最新の映像技術を駆使したシステムが導入されたが、協力企業には、日本のシャープやエプソン、ボーズなどの企業が並び、その技術力を提供している。まさに最高のアーティストとテクノロジーが融合した現代アートの企画展になった。これはテクノロジーの表現力とアーティストの感性が成熟した段階で今後作品が生まれていくことの証明でもあり、今年の国内の展覧会の中でも重要なものの一つになることは確かであろう。
 私も、京都のソフトウェア開発のベンチャー企業と共同で仕事をした時期があるが、まさにスピードが要求される世界であり、最新の技術力も、それを上回るものが登場すれば瞬時に過去のものとなる。アートとテクノロジーがこれからも手を結べば、人間の創造力はさらに進化するに違いない。
 写真や絵画の世界を超えた映像の領域には、まだアーティストが踏み入れていない未知の領域がある。こうした展覧会を見る側も、さらに面白いものを見たいと思うし、いい意味での相乗効果が生まれ、もう5年いや3年もすれば次世代の突出したアーティストが登場し、映像の世界に今までにはない新しい概念を見い出しているかもしれない。
 この企画展のvol.2を期待したい。

 

2008年 画人日記(第87回)  「ルノワール+ルノワール展」

場所/京都国立近代美術館
日時/2008/5/20(火)〜2008/7/21(月・祝)
主催/国立国際美術館、朝日新聞社・朝日放送














 一般的に、日本では人気の高い画家の一人であるルノワールの作品を数多く目にするのは、今回が初めてである。印象派は光の扱いに際立った表現を生み出し、豊かな色彩感覚と同時に、それまでの絵画に対する距離感を、より身近なものにしたと思う。
 元々は、映画監督になる前、次男のルノワールは父の絵画制作のために、モデルになり、制作活動にも加わったことがある。
 こうした経歴が、映像作家としての起点となり、やがて20世紀初頭からの映像技術のはじまりと共に映画監督としての道を歩むことになる。
 一方、父ルノワールの作品は、原画を見てより肖像画の出来の素晴らしさを感じた。構図とか色彩はもちろんだが、顔の表情にルノワールの愛情や情熱が強く表現され、見ていると自然に視線が止まるほど魅惑的である。家族は常にルノワールのモデルになり、多数の傑作を残した。
 ルネサンス以降の絵画の歴史を辿ると、18世紀、19世紀の付近が大きな節目である。世界が近代の動乱の時期であったことと関係がある事は否定出来ない。印象派はある意味で、それまでの絵画を否定し、革新的な世界を切り開いたパイオニアでもあった。生活に潤いや豊かさを求めた同時代の民衆の表情や、街の風景は、多くの印象派の作品に表われている。
 ルノワールの作品が、世界はもちろん日本人にこれほどまでに愛されているのには、どういった理由があるのだろうか。優しさや愛、そして家族に対する理想の姿が表現されているからではないか。時代は変わっても、普遍性のあるものは、いつまでも評価され、人々の心に残る。ルノワールは身近な人々を描きながら、キャンパスの中に、普遍性のある美の追求を実践し続けたのである。
 また映画監督の次男ルノワールは、そうした父の美的DNAを引き継ぎ、映像の中に独自の美の世界を構築していったのである。
 父は、個対個の関係であるとするなら、息子ルノワールは、個対群集になる。映像メディアという当時の最新技術を使い、具体的にコミュニケーションが可能な、世界に向けたメッセージを持った。
 本来なら、映像作品はその作品をすべて鑑賞した上で評価しなければならないが、絵画との関係でダイジェスト的にしか見れないのは残念であるが、展覧会期間中、プログラムを組み、選ばれた作品が上映されている。またミュージアムショップでもDVDが販売されている。
 絵画と映画。共にビジュアル表現として、21世紀はいよいよ「実験」という言葉を必要としない展開で見応えのある企画展がこれからも登場してくることに期待したい