neutron Gallery - Christoffer Rudquist Exhibition - 
2005/4/5Tue - 10Sun 京都新京極 neutron 5F & B1 gallery

スウェーデン出身、現在はロンドン在住のフォトグラファ−。 北欧ならではのクールなデザイン感覚と、人間の営みを優しく見つめる暖かな目線 が同居する。5階ではニューヨークで発表した「HOME TOWN」シリーズを再現、地下では日本の 印象を捉えた大判サイズの力作が並ぶ。世界各国、場所や言葉は違えど自分のフレームで切り取って見せる力量は確かなもの。





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gallery neutron 代表 石橋圭吾

  この度ご紹介するのは、スウェーデン出身で現在はロンドンにて活動しているフォトグラファ−であるクリストファー。彼は最近までずっと地元のスウェーデンに拠点を構えて活動していたため、その写真スタイルは基本的にヨーロッパモダンなテイストを踏襲しているように感じる。この誌面でご紹介し切れないのが残念だが、彼の撮影のモチーフは大きく分けて「ポートレート」「建築、インテリア」「都会あるいは郊外の風景」の三つに分けることができるが、それぞれが相互的に関わっており、クールなのに何処か暖かい視線は常に公平に向けられている。ヨーロッパ、特に北欧は建築好きにとっても垂涎の地であるように、モダン・アーキテクチャーの完成度は高く見所は多い。寒い冬の時期、多くの人々は屋内で楽しむ機会が多い為、自然と建造物は大きく、内面では柔らかく人々を包み込み、デザインにおいては北欧の歴史を反映してセンス良く、人間と密接に存在しているのではないかと推測する。日本において建築やデザインが単なる流行と捉われがちなのとは対照的に、かの地では無機質なモダン建築に、暖かな血が通っているかのように。クリストファーの写真にもそのような温かみが随所に感じられる。
  NYでの2002年の発表「HOME TOWN」(今回、5階ギャラリーで再現)を見ると、郊外の住宅地ならではの閉塞感と同時に言葉を必要としない安心感が同居している。HOMETOWNは同時代の多くの写真家が目を向ける被写体なのだが、彼にとっても自分の出発点として、また常に身の回りに視線を向ける写真家として消化しておかなければいけないものだったのであろう。そしてそこから世界へと羽ばたいていく過程において、目覚ましい活躍を見せている。彼の妻が日本人であることもあって、もちろん日本に対する興味も尽きない。今回、地下で発表するのは私と彼が共に選んだ「日本人は普段見過ごしてしまう日本、そして当たり前の光景」である。大判の10枚のプリントに焼かれる光景はまぎれもなく日本のありふれた光景でありながら、私たちにとっては舞台セットのように「出来過ぎた」印象を与えたり、リアリティーの欠如を感じたりするかも知れない。これは外国産の映画に登場する日本に対する違和感とは少し違う。それらは明らかにまがい物であり、パロディーであるのに対しクリストファーが見せるのは彼がスウェーデンをはじめ世界の各地でするのと同様に建築を見つめ、人間を観察し、そのありのままの佇まいをカメラに収める行為である。そこには何のギミックも無いのにクールなデザインセンスが発揮され、そこに優しい眼差しが同居する。日本で言えばホンマタカシが近いのだろうか。日本のように「写真」におけるコマーシャルとアートの境界がそれほどはっきりと分れていないヨーロッパでは、撮影者自身も自分のスタイルを過剰に意識することなく、ありのままの写真を撮る事が出来るのだろう。極めて硬質なのに、力が抜けている。オフィスの片隅で煙草を片手にポーズを決めるサラリーマンのオヤジ達が、ここまで格好よく見えていいのだろうか?もちろん、良いではないか。何故だか、私たちも日本が好きになる写真なのである。