neutron Gallery - 村井 美々 展 - 
2005/3/28Mon - 4/4Sun 京都新京極 neutron 5F & B1 gallery

御存知、カラフルポップでオンリーワンのアニメーションを造り出す村井美々が、 この春も登場。いつも新機軸を打ち出して「あっ」と言わせる彼女だが、今回は何と 水彩を使った新作を発表。今までとは一味違った繊細な描写と人物像は作家の新たな 一面を強く感じさせるでしょう。地下では大画面プロジェクションによる新作上映、 5階ではその原画となる水彩画を展示予定。春の訪れとともに、ぜひご覧下さい。





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gallery neutron 代表 石橋圭吾

  今や押しも押されぬ人気作家と成りつつある村井美々の個展を開催するのは、ニュートロンでは3回目となる。最初は2003年の8月に、「club neutron week」と題したクロスオーバーな企画展として、村井美々のアニメーションをフューチャーしながら会場でライブイベントも行った。その結果、全国的に人気のバンド「flex life」が出演した際に映像を気に入り、「ameflica」という同バンドのミュージッククリップに村井美々が起用され、話題を呼んだ。前回は昨年4月、ニュートロンの恒例企画展である「エホンノミライ」の一環として5階の会場で個展を行い、その時には従来のアクリル絵の具のアニメーションから踏み越えて、昔懐かしいタカラの玩具「せんせい」(マグネットに反応して黒い線が描けるもの)を用いたアニメーションを発表、これまた高い評価を得た。この作品はニュートロンでCD-ROMとして販売し、好評だった。常に新しい領域へと踏み出し、その度に私達を唸らせ、楽しませることの出来る数少ないクリエーターの一人であることは今や証明済みである。
  2004年も村井美々にとっては前年から続くオーバーワークとも感じられる発表の数をこなし、作品は東京はもちろん海外にも展開される。しかしながらオーバーワークと思っているのは私達だけで、彼女自身は溢れるアイデアと高速の処理速度を持って次々とクリアしていく。その様は現代の美術作家としては極めて珍しい程のフットワークの軽さと作品の多作さをもって際立っている。このままのスピードでどこまで進めるのか、等と心配するのは杞憂に終わるのだろうか。もちろん、数に重きを置いて一つ一つのクオリティーが下がることは無い。最近では個展というと1本の作品(短編 / 3〜5分程)を新作として用意し、その上映と原画展示を行うスタイルが定着しつつある。今回も地下では上映、5階では原画展示を行う。村井美々は短期間ではあるものの、新しいアイデアを盛り込んだ短編映像を生み出した時点で、場所を変えた発表が可能になるのだ。そう考えると、その多方面への進出も納得できる。
  さて今回はと言えば、一番驚くのはその「絵」であろう。以前にも少し話に上ったことがある「水彩」を用いたアニメーションが、いよいよ公開される。その「水彩」ならではの滲みや発色はアクリルのそれと違って繊細さと空間的な広がりを感じさせ、絵のタッチ自体もまるで少女漫画かと見間違うくらいに変化している。実は村井美々は元来浮世絵に興味を持っており、おそらくこのように女性画を描く事自体は自身にとっては手慣れたものなのかも知れない。しかし今まで極端にディフォルメされた愛らしいキャラクターを見て来た私達にとっては意外である。しかし水彩においても原色を用いて虹のようなグラデーションが見えるあたりは、技法は違えど村井美々ならではの親しみ易いポップセンスが伺えるし、結果として従来の作品との距離を縮めるのだろう。絵画としての存在と、それを展開させてのアニメーションを両立させるのは決して容易い事では無いはずなのに、いとも簡単に実現しているように感じられるのは流石である。そして今後の村井美々を占う上で、より多くの可能性が秘められている事を期待してしまうのは、私だけでは無いだろう。