neutron Gallery - 鈴木 宏樹展 『遺失物拾得』-
2008/1/29 Tue - 2/10 Sun gallery neutron


profile
鈴木 宏樹  SUZUKI Hiroki

【略歴】
1983 愛知県生まれ
2006 京都精華大学 芸術学部 造形学科 立体造形専攻 卒業
2008 京都市立芸術大学 大学院 美術研究科 彫刻専攻 修了予定

【個展】
2004 どうぶつしっかく (neutron 5F gallery/ 京都)
2005 オルガナイザー (Five mansion gallery/ 神戸)
2006 aimai mean mind (gallery neutron / 京都)
2008 遺失物拾得 (gallery neutron/ 京都)


【主なグループ展】
2005 京都精華大学 立体造形三回生展 ( ギャラリーそわか/ 京都)
2006 STAIRS ( 海岸通ギャラリー・CASO / 大阪)
2007 note . (池坊短期大学・むろまちアートコート/ 京都)
     ART AWARD TOKYO 200 7(行幸地下ギャラリー/ 東京)
     裏・アートマップ(京都芸術センター/ 京都)
     FLY(情報科学芸術大学院大学・IAMAS / 岐阜)


statement

「制作全般のステーメント」

当初、私の作品は、洋服や布といった素材が多く使われてきました。
それは私が、ファッションの道へ進みたかったという気持ちと、洋服に対する偏愛が大きな理由として考えられます。
洋服というヒトを包んでいる表面を通して、ヒトの存在について思考するということが、その当時の大きなコンセプトにありました。

前回のneutronでの個展はそのコンセプトの終焉を迎える、一つの区切りを位置しています。ヒトの表面からモノの表面へ移行した作品たちは本物になりきれず、また偽物でもない、何物でもない何かという存在を示すように思えたのです。
なぜそのようなことをしていたのか振り返って考えてみると、私自身がそのような存在ではないかという思いがありました。ここにいるのか、いないのか、存在 しているのか、していないのか、存在(身体)という危ういものは信用できるのか、という疑問が私を制作に向かわせているのではないかという、一つの答えを 出すことができました。
それが京都市立芸術大学制作展で出品した「スウィート ゾンビー」を制作するきっかけになったのです。
ぬいぐるみという身体の延長にある物質に、私自身の唾液とチョコレートが混じったもので染め上げることで、自分自身の身体がない状態での存在を示すことがコンセプトでした。
それからは、ヒトの表面からヒトの生理や見えないところを含む内側に興味が移り、それを主にして制作をしています。
制作上の変化として、京都芸術センター / 裏アートマップで発表した「ミスター サンバディ」以前の作品は既製品を使用することが非常に多く、その手法は簡単であるが、イメージを0から作り出すという点で大きな問題を抱えていることに 気づき、それ以降は既製品を使用することから遠い仕事に心がけています。




「制作全般のステーメント」

私が住んでいる町に工事中の交差点があります。
そこは私が引っ越してからずっと、工事が終わることなく進められています。
そこで、一人の男性が24時間、休むことなく旗を振り続けているのです。
彼は電源が供給され続ける限り、LE D ライトの世界で永遠に生き続けるのでしょう。
(それはまるでオピーの彫刻のようだ)
このように、私たちの身体の形状は、データ(これに限らず社会的な様々)によってコントロールされ、形のないものに解体されているように思います。

現実世界とは別の、もう一つの世界に生きることのできる私たちの身体は、現実世界に置き忘れられ、それは不自由で仕方なく、まったくもって不必要なモノであるような気さえするのです。
しかし、そのように精神と身体が乖離した状態であったとしても、所詮私はヴァーチャルの世界には生きることのできないわけで、リアリティのない現実世界で生きることを余儀なくされています。

ヴァーチャルの中での「遺失物」を「拾得」するための術。
そのような私は、生と向かい合わなくてはなりません。