neutron Gallery - 三瀬 夏之介 展 『 奇景 』 - 
2006/10/16 Mon - 29 Sun gallery neutron kyoto
ニュートロンアーティスト登録作家 三瀬 夏之介 (平面)

今や日本画界のみならず若手現代美術作家の筆頭注目株となった三瀬。今年もニュートロンで新作の大画面作品を発表。来年3月からのイタリア留学を控えて波に乗る中、渾身の力作となるのは間違い無 い。
他に小品も多数展示・販売予定。今こそ、ぜひ彼の作品をコレクションしてみては?





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gallery neutron 代表 石橋圭吾

 三瀬夏之介は今や、日本で最も注目される若手作家のひとりであり、「日本画」の内外でその噂は絶える事が無い程の活躍ぶりである。昨年の5月、ニュートロンで発表した黄金の絵画「日本の絵」公開時から今に至るまで、大規模な展覧会招致と受賞を重ね、そしてまたここで新たな作品を見せてくれる。
 思えばまだ「ミクストメディア」と本人が称していた時代(ほんの数年前であるが)から、昨今の「日本画」考察を経て独自性と世代性を象徴するキーワードとして敢えて「日本画」を殊更に称して以後、確かに彼の美術としての立ち位置は明確になり、批評の対象となった。三瀬はそもそも京都市立芸大の日本画専攻卒なのだから「日本画」を名乗ることは間違いでも筋違いでもなかろうに、一方で自身の中にその言葉に対するアレルギーと反発心をずっと抱いており、それが制作のエネルギーの源でさえあったと思う。しかし今、彼は堂々と「日本画」を名乗り、もはやそこを通過しようとしている感がある。所詮ジャンルやカテゴリー等、一時的な分類の表記に過ぎず、恒久的なものではない。作家としてもその危うい名前に捕われていたのでは表現の広がりなど望めず、さりとてジャンル間の交流といった今日的手法も一通り試されてしまった今日。だからこそ、根本的に何かを描きたいと思う気持ちの有無が、星の数程の「作家志望」の者達との決定的な差になるのだと感じる。<br>
 そう、三瀬は例え洋画だろうと水墨画だろうと、「絵」を描くことが命であり、己に体現できる最高の表現なのである。
  今年1月の東京都現代美術館のMOTアニュアル「No Border 「日本画」から / 「日本画」へ」では最も異彩を放ちながら王道を感じさせ、贔屓目で見なくても一番秀でていたと素直に感じられた。3月には五島記念文化財団の美術部門新人賞を獲得、その結果来年の春から1年間のイタリア留学が決定している。この夏は開催された安曇野市豊科近代美術館の夏休み企画展に参加し、いよいよ長く濃密なシーズンのひとまずの締めくくりに向かおうとしている。※今展終了後、11月には第3回東山魁夷記念「日経日本画大賞展」にも再び選出が決定している。
 楽しみなのは彼の描いてきた日本の現代の風景(それは古来から受け継がれてきた山紫水明も含めて)、土着的ファンタジー、そして少年のようなSF的夢想の混在する光景が、イタリアの地に羽ばたいて以降、どのように変化するのか・しないのかである。彼が帰国後に報告展を開催するのは2009年の予定なので、それまでは暫くお預けとなってしまう。だが私を含めてファンとしてはやはり彼の一挙手一投足から目が離せない。私たちの人生に決定的な影響を与える絵があるとすれば、きっと彼の手によるものではないかと信じてやまないからだ。大仏もUFOも富士山も三瀬にとっては現代のファンタジーであるとともに普遍的なアイコンとしての存在でもある。では「日本」という国を出た時、世界中の人々を驚嘆させる絵画には果たして何が描かれるのか?そのヒントは既にこの幻想的な誕生と破壊の世界「奇景」に描かれているのかも知れない。