neutron Gallery - 足田メロウ・豊原エス展 - 『 嘘をつけばよかった 』
2006/8/21Mon - 9/3 Sun gallery neutron kyoto


御存知、メロウとエスの黄金コンビが満を持して登場!メロウの寓話的で情熱的、時にユーモラスな絵とストレートに心に響くエスの詩。 ファンならずとも必見の2週間。詩画集のニュートロン限定バージョンもお見逃しなく!





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gallery neutron 代表 石橋圭吾

  三たび彼らがニュートロンにおいて、詩画集の出版を記念した展覧会を開く。
  一度目は今から遡ること4年前、2002年の9月に「空を見上げる」を自費出版し、その原画展として開いたものであった。それ以前にも豊原の自作詩集に彩りを添える形で絵を提供していたメロウだが、実質的に二人の共同作業として詩画集を作ったのはこの時が初めてであった。メロウの鮮烈で寓話的な絵と、ストレートに伸びやかに発せられる豊原の詩は黄金タッグとも呼べるくらい相性が良く、この展覧会はのちにエポックメイキングな出来事として語られる程人気があったものだ。そしてその結果、京都に拠点を置く美術系出版社「青幻舎」の目に留まる事となり、翌年4月には待望の全国出版を果す。これが二度目の出版記念展となる「歌いながら生きていく」(詩画集も同名)である。原色を多用するメロウはこの本においては黒のみの筆遣いで新境地を見せ、これが大いに当たる。ややもすると色数や筆致の多さで混沌としてしまいがちの従来の作風を抜け出し、モチーフと印象的な構図、そして少ないが確かな筆運びによって彼のスタイルは一つ確立されたのもこの時期である。そして何より、この「歌いながら生きていく」の本の売上は会場においては目覚ましく、全国の書店においても品切れが相次ぐというヒット作になった。
  その後、二人は従来の個人活動を精力的に展開する。豊原はポエトリーリーディングをイベントやワークショップで披露し、幅広い支持を拡大していく。メロウは自身のペインティングを含むアートと音楽の融合を図るイベントのプロデュースや個展、壁画制作などの充実ぶりである。「歌いながら生きていく」以降、二人ともニュートロンにおいて個展を経験しているが二人揃っての登場は久しぶりである。そして、3月に発売された共作のポストカードブック「旅することば」も好評発売中でありながら、そこに収録されなかった作品を主にまとめた自主制作本「嘘をつけばよかった」が今回の題名である。
  メロウいわく、「旅することば」が可愛らしく洗練された内容だとすれば、「嘘をつけばよかった」は格好わるいけど憎めないおっさんの様なもの、だそうだ。会場では原画の展示はもちろん、初お目見えとなるこの本の出来も気になるところだ。もはや京都のアートシーン(ストリートとかアンダーグラウンドと呼ばれた時期を経て)において最重要人物と言っても過言ではないこの二人、久しぶりのニュートロンで魅力的なため息を吐くか、否か。