neutron Gallery - 鈴木 宏樹 展 - 『 aimai mean mind 』
2006/7/24 Mon - 8/6Sun gallery neutron kyoto
ニュートロンアーティスト登録作家 鈴木 宏樹  (立体・平面)

この春から京都市立芸術大学大学院に進学、注目度を増すダークホース的存在。常にシニカルに、どこかユーモア漂う作風の裏には現代社会の裏側を鋭く突く眼力 が感じられる。かつて隆盛を誇った彫刻分野を背負って立つ?未来の巨匠が見せる 「もの」の表と裏。「フェーク」とは果して誰の為のものなのか





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gallery neutron 代表 石橋圭吾

 この作家は将来、日本の現代美術を代表する存在になるかも知れない、いやなってほしいと私が思う一人である。
 鈴木宏樹は京都精華大学在学中の2004年の1月、そして同年の11月に個展を当時の5階ギャラリーで行っている。最初は「ヒロキトンボ」名義、そして次が「鈴木ひろき」名義であったのだが、次々変わる名前以上に作品のインパクト、ユニークさは当時から光っていた。「WORLD WIDE MOJYA」と題された初回個展は、フェイクファーとモデルガン、延長コードを用いた作品群を発表。まだ稚拙ながら問題意識の高さとシニカルな視点を垣間見せた。続く「やせいのしょうめい」においてはフェイクファーとFRP樹脂、フォルモによって生み出された生物モデル「やせいのしょうめい」と衣類をチクチクと縫い合わせた奇妙な作品群を展示、しかもそれらは期間中、会場にて作家自身が制作を進め、完成するという形態をとった。ここにおいて彼の造形作家としてのアイデア、素材を選ぶ・用いるセンスは一歩他を抜けた感があった。そして2005年の夏にはニュートロンのプロデュースにより神戸の美容室ギャラリー(deem / Five mansion gallery)における展示を行い、縫い付け作品群を更に展開した。この春からは京都市立芸術大学の大学院に進んでいる。
 彼の作品を特徴付ける要素として、「洞察力」「素材」「造形」が挙げられる。「洞察力」とは人間の営みに対する鋭い観察力と考察を意味し、ユーモアのオブラートを被せつつも、彼のシニカルな視点は常に作品の根本に存在し、さらには制作の意欲ともなっているようだ。「素材」も印象に強く残る。フェイクファー、延長コード、衣服、マネキンなどは度々登場し、現代社会の産物としての存在感と、同時に彼の手によって魔法がかけられたような再現性を発揮する。よくありがちな、素材遊び(素材によって遊ばれているともいえる)の作家とは明らかに一線を画すであろう素材の用い方は、すなわち制作のテーマが常に批評性を有し、あくまで作家の必要に応じて選ばれた素材達であることを感じさせる。「造形」面では初期の稚拙さからすっかり脱却し、今や彫刻としての物理的存在感とビジュアルアートとしてのインパクト、さらには作品によってはテキスタイルアートとも言える多岐に渡る造形をみせ、オールラウンドな作品作りを楽しんでいるようだ。
 フェイクファーや衣服を扱う作品群では人間の生み出す表装の産物を通じて、それを身につける人間そのものを揶揄してみせる。華美な装飾とその裏返しの物悲しさを訴える「ぱらだいす銀河」や「ビューティ ビースト」においては、物によって飾り立て、色彩に埋没する人間を象徴している。さらに展覧会では未発表ながら秀逸なのは、ファッション雑誌の切り抜きのみで構成されたコラージュ立体標本「エイリアンズ」である(ニュートロンのショップで扱っているのでぜひ注目されたし)。その卓抜したアイデアと、シンプルな造形はまさに現代の装飾昆虫を生み出したと言えよう。従来はこうした「衣食住」における「衣」に着眼していた様だが、今回の新作展では壁紙を扱うとのことなので、ひょっとしたらそろそろ「住」環境にモチーフが移行していくのかもしれない。もちろん、「食」の登場も将来的にはあり得る。人間の営みが続く限り、彼の密かな観察と笑いに包まれた批評は続く。鈴木宏樹は未だ学生でありながら、その大器の片鱗を着々と見せている。