neutron Gallery - 日向一夫 展 『娯楽絵画 vol.2』 - 
2004/3/8Mon - 14Sun 京都新京極 neutron 5F gallery

日本画に対する独自の観点から、その装飾性と現代のデザインとを結び付け、大 胆な展示を行う作家。街中でのディスプレーなど、活発にその表現の領域を拡げつつ ある。今回は新作を中心に大画面の迫力と、「壁」における装飾(デザイン)の視点 を見せる。





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gallery neutron 代表 石橋圭吾

  ここにも又、新たなる日本画の領域を模索して密かに独自のスタイルを築き上げようとしている作家がいます。
  日向一夫は、今では一般的にも知られる会田誠や、あるいはそもそも日本画の領域からスタートした村上隆のような現代を代表する作家を引き出すまでもなく、着実に制作を進めて来ました。いや、むしろ前述の2人の後を追うと捉えてしまうのは全くの間違いであり、彼は大学在学中、あるいは卒業後の活動において日本画の範疇に居ながら現代のデザイン性やサブカルチャー的要素を盛り込んではいたものの、なかなか評価されるに至らず、苦悩の日々を過ごしていたのです。しかしながら昨今ではそれらの要素が絵画あるいは美術全般の表舞台で堂々と扱われるようになり、日本画の殻を破るという行為も真っ当なルートとして認められてきました。それは立ち返れば会田、村上らの功績と言えるかも知れませんが、少なくとも日向は、彼なりに黙々と歩みを続けてきたのです。
  従来は、技術力は有るが発想的に新味にかけ、現代美術から語られることの少なかった日本画。しかしそもそも岩絵の具や顔料を用いた平面の表現は日本人の感覚や技術力に合い、西洋画との比較をするに及ばず、その風土や感性を発揮するにふさわしい手段であったのです。日向が見せようとするのは単なる分類学上の日本画(油絵を主体とする西洋画に対する意味で付けられた言葉)ではなく、そもそも室内や寺院の装飾画として、古来から浸透していた美術のエッセンスだと言うのです。つまりは、わかりやすく言えば日常生活におけるインテリアやデザインの領域に近付き、あえて「日本画」というスタイルや表現を用いつつ、現代の装飾画としてのスタンスを築こうとするものです。
  私が殊更に言う間でも無く、日本画のデザイン性は既に多く語られるところであり、言わば美術的基礎を固めるという意味でも日本画を習得することは少なからず現代の作家にとってプラスに働いているとも感じられます。そして彼らはもう古い概念や単なる通念に捕われることなく、独自の表現をプライド高く見せようとしているのです。
  ある意味で現代美術の枠をも動かしていきそうなこれらの作家の出現は日本人のみならず、世界から注目を浴びて然るべき、時代の必然なのかもしれません。