日向一夫(ひゅうが・かずお) 展
「娯楽絵画 vol.3」
2005.4.18tue - 24sun 5F gallery
 
 「娯楽絵画」とは、日向一夫の一貫してテーマとする「絵画の娯楽性」を体現するためのコンセプトであり、その展覧会におけるタイトルでもある。今回で自身3回目となる同タイトルの個展は、前回のニュートロン5階ギャラリーでの「vol.2」とは少し趣を変えそうだ。彼の持ち味である、日本画を出自とする緻密な画面構成とデザイン性、及び中間色を活かした色彩はグラフィックとしてのインパクトと絵画としての重厚さを兼ね備えているが、前回はどちらかと言うと絵画としての作品よりも会場構成におけるカッティングシートによるグラフィックに目が行きがちで、結果として両者が同居したというよりも殺しあった印象が拭えない。両者のさじ加減の問題とも言えるのだが、決してそれはグラフィック及びデザインがサブとしての位置付けに有るからでは無い。彼のカッティングシートによるグラフィックは作品としての性質も兼ね備えている。日本画そのものが元来、装飾性を多分に孕んでおり、それは現在のグラフィックやデザインにも多大な影響を与えている。もちろん彼としてもそれを踏まえた上でさらに絵画としての領域と、それに附随する展開に自身の個性とデザインセンスを発揮して行きたいのは間違い無い。しかしまずは、「絵画(作品)」有りきだとすれば、デザインとは必要に応じて変化するものであり、順序で言えば絵画作品を引き立たす、あるいは絵画の中で発揮されるべきものである。グラフィック・デザインそのものは「作品」とは言い切れず、メッセージを内包した上で「要求されて」成り立つものだからだ。つまりは日向は自作の展覧会においてグラフィック・デザインを自らに要求し、それを作成する。ここで作品との距離感や序列を乱すと、観客はどちらをもって優先的に感じるべきか迷う事になり、必然的に全体としての印象は散漫になってしまう。今回の「vol.3」ではその辺りをどう消化して、提示して来るかが見物である。
 一方、作品そのものに発揮される彼のモチーフ及びメッセージとなる部分も、極めて興味深い。いわゆる「レトロ」から「レトロ・フューチャ−」と呼ばれる古びたSF調の世界観まで、日本画という領域をパロディにしながらも活用するしたたかさと重なり、効果的であるのだろう。「絵画」や「デザイン」という外見の面白さは、ツールの使い分けに過ぎないとも言える。作家としての日向に求められるのは、むしろソフトとしての世界観のより充実した提示であろう。それはすなわち、彼が描かんとする現象が単なる珍しさやアイデアの面白さで片付けられる事無く、メッセージとしての本質的な力強さ、ギリギリの表現欲求から生まれた切実な感覚をどこまで伝えられるかにかかっている。もしデザインや多彩な趣向がその邪魔をするようであれば、それらは必要では無いのかも知れないのだ。私は策士が策に溺れない様、期待しながら発表を待ちたい。
ニュートロン代表 石橋圭吾

日向一夫 HYUUGA KAZUO

活動履歴
1999.2  光琳社CREATORS掲載(以後2000年まで)
1999.4  嵯峨美術短期大学日本画科 卒業
1999.5  日仏現代作家展 入選(東京,パリにてギャラリー展示)
1999.8  コンテンポラリーアートINラテンアメリカ 出品(エルサルバトルに展示)
1999.12  初個展『ノストラダムスをブッ飛ばせ!!展』(キャピタルギャラリーにて展示)
2000.1  個人活動に幅を持たせるため『NEO JAPANESE PAINTING PROJECT,KYOTO』を立ち上げる
2000.2  『キュピキュピ地下机上』,『ドゥ シス コアン SHOP』にてポストカード発売開始
     (2002年,諸事情により撤退)
2000.4  Win用ゲームソフト『休日は飛行機に乗って』のグラフィックチームに参加
2000.8  クラブ メトロにて展示
2000.10  WHITE CUBEギャラリー展Vo3 出品(WHITE CUBEギャラリー心斎橋パルコにて展示)
2000.12  2001年アートカレンダー展参加(WHITE CUBEギャラリー心斎橋パルコにて展示)
2001.2  嵯峨美術日本画科OBによる『芽生え展』参加(以後2002,2003年参加)
2001.2  個展『日向一夫展』(WHITE CUBEギャラリー心斎橋パルコにて展示)
2001.6  Win用ゲームソフト『僕は航空管制官2』のグラフィックチームに参加(以後のリリースにも参加)
2001.8  二人展『KYOTO-MIXIER展』(恵文社アンフィール)
2001.8  『ONLY ONE ART MARKET』(WHITE CUBEギャラリー心斎橋パルコDUEにて展示)
2001.9  『時代妄想展』(WHITE CUBEギャラリー心斎橋パルコDUEにて展示)
2001.11  アーティストグループ『ナノプローグ』を立ち上げる
2002.1  『ナノプローグ』活動第一段『娯楽芸術展』プロディーサー/作家として参加
2002.1  『芽生え展』(京都文化博物館)
2002.2  フリーペーパーmimeeeに参加(以後参加中)
2002.6  art marcket in 弘法(ギャラリーそわか)ナノプローグとして参加
2002.8  作品ファイル展示開始(ニュートロン)
2002.8  『毒』(恵文社アンフィール)ナノプローグとして参加
2002.10  art beat river place(港町リバープレイス)ナノプローグとして参加
2002.11  近畿大学医学部学園祭においてライブペインティング ナノプローグとして参加
2003.1  個展『日本画!?娯楽絵画』(恵文社アンフィール)
2003.1  『芽生え展』(京都文化博物館)
2003.3  ショーウィンドウシリーズ『現代自己陶酔図展』(京都レコード店三条本店十字屋ショーウインドウ)
2003.4  ショーウィンドウシリーズ『因果応報展』(京都レコード店三条本店十字屋ショーウインドウ)
2003.4  エホンノミライ4(ニュートロン)
2003.5  ショーウィンドウシリーズ『二足歩行の是非展』(京都レコード店三条本店十字屋ショーウインドウ)
2003.6  アートチャンネル (OBPアートプロジェクト)
2003.10  ラビットパンチCDジャケット制作
2004.1  『芽生え展』(京都文化博物館)
2004.3  個展『娯楽絵画Vol,2』(ニュートロン)
2004.7  『日本画の100』(石田大成社ホール )
2004.9  新風館にてグッズ販売(INK)
2004.12  ライティングプロジェクト『ほのか』(文椿ビルヂング)

製作活動目的
『日本画≒装飾美』と言う僕の考えの元、 日本画で、今生きていなければ描けない身近なサブカルチャーや生活様式、現代社会など 『リアルで生きている物』を物を描き、本物(生産物では無いオリジナル)の作品を間近に鑑賞できる、ある種のライブ性が有る個展や展示など中心に活動しています。
展覧会名  / 娯楽絵画VOl,3
展覧会主旨 / 僕の個展の主旨である、『エンターテイメント(娯楽)』をモットーに行う展示で、本来の絵画が持つライブ性と空間作りを出そうと思っています。

cokecompany@par.odn.ne.jp


 
「娯楽絵画」vol.2 2004 neutron 5F gallery
 
ショーウィンドウ シリーズ#1
「現代自己陶酔図展」
2003.3 京都レコード店三条本店 十字屋ショーウィンドウ
 
「ほのか 展」 2004.12〜2005.1 文椿ビルヂング / 京都