neutron Gallery - 松本 けい子 展 -
2007/12/14 Mon - 27 Sun gallery neutron
ニュートロンアーティスト登録作家 松本 けい子 MATSUMOTO KEIKO

水彩や刺繍を用いて、色彩と情感溢れる絵画〜イラストレーションを生み出す松本けい子。 京都のアンダーグラウンドシーンから羽ばたき、着実に歩みを進めている彼女が久しぶりにニュートロンでの個展に挑む。 松本の叔母にあたる八幡はるみの染めによる布地の上に、松本けい子 のペンが、筆が、そして針がどのように絵を描くのか。 クリスマスの華やかさに彩られる12月、ギャラリーも色とりどりに輝くことでしょう。




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ニュートロン代表 石橋圭吾

  京都における音楽・舞踏・パフォーマンスを含むアートシーンの中核として存在するスポットの中でも、旧毎日新聞社ビルをリノベーションした「アートコン プレックス1928ビル」ほど一時代を築いたものは無いのではないだろうか。さらにその中でも、地下1階のカフェ・ライブスペース「アンデパンダン」は連 日のように音楽、ダンスパフォーマンスからライブペインティングまで幅広いアーティストが登場する、まさに「アンダーグラウンド」な場所であった。当時の ニュートロン(新京極三条)とも非常に近い場所であったため、アーティストの交流も盛んで、ニュートロンではアンデパンダンに所属するアーティストの個展 やグループ展を開催することも多かった。そして時は流れ、ニュートロンは現在の烏丸三条に移り、アンデパンダンを拠点としていたメンバー達も少しづつ活動 の場を変え、独自の道を歩もうとしている。ここに登場する松本けい子は、足田メロウと並んでアンデパンダンのアートを支えた一人であり、京都に留まらず大 阪でも発表の多い人気アーティストである。
  京都精華大学を出た後、松本は烏丸五条にある知る人ぞ知るイラストレーター養成所「インターナショナルアカデミー」(数多くの著名人や作家が講師をつと める、虎の穴的な学校)を経て、独自の画風を築き上げていく。今ではどちらかと言えば珍しい「水彩」を用いての絵ではあるが、その印象は決して水に溶ける ように弱くはない。青や黄、赤や緑の原色を大胆に用いながらも、それらの色が滲みながら重なり、広がっていく様は作家の心象と鑑賞者のイメージの接点を模 索するかのごとく縦横無尽に展開され、画面に或る一定の印象を定着させない。モチーフには必ずと言っていいほど動物と女性(子供)、樹や草花が描かれ、そ の向こうには山や広大な景色を連想させる背景が見える。本人曰く「どうしても、描いているうちにそれらが出てくる」そうである。だとすれば意図的に変化を つけようとしない限りは同じモチーフによる単調な連作が生まれそうだが、松本の場合はそうではない。いずれの作品もどこかでイメージを共有しつつ、全く異 なる印象を持つ。色彩も(特に原色の場合は好き嫌い分かれて)鑑賞者に影響を与えるも、それらは松本の世界の入り口でしかなく、カラフルな華やかさの奥に 見える光景にはもっと別の色彩が潜んでいる様にも見える。
  画材も多様である。水彩はもちろん、ペンや鉛筆、刺繍まで使いこなして様々な線を表現する。色彩(塗り)とは別に、松本の画風のもう一つの特徴である 「線」こそ、実はイメージの広がりや情感を表して余り有る、重要な要素である。彼女がイラストレーションから絵画までの領域(あるいはそれ以上)を自在に 行き来できるのも、線の多様性があるからだと言っていいだろう。
  今回の個展は今までの中でも一番の大作が予定されている。使われる技法も様々で、彼女の現時点での表現の魅力がぎっしりと詰まった作品となるだろう。そ して背景として使われる布地は、松本の「叔母」にあたる染色作家・八幡はるみ氏によるものである。八幡氏もまた原色を活き活きと用いた色彩の世界を特徴と するが、その上に松本の筆が、ペンが、そして針がどのように走るのか、興味が尽きない。ファンにとってはオリジナルバッグも多数出展されるのは嬉しい限り だろう。今年のクリスマスを彩るのは松本けい子で決まり、である。