平澤 直治(ひらさわ・なおじ) 展
「日本國  / Thanatos」
2005.4.25mon - 5.1sun 5F gallery
 
 昨年の同時期に開催された個展に続き、平澤直治の個人的モノローグ的意味合いの強い「日本國」シリーズは2回目の発表を迎える。天皇という、現代社会を問う上でも避けては通れない主題を忍ばせつつ全体にソフトフォーカスを多用してあくまで「印象」を浮かび上がらせた前回と異なる点で言えば「Thanatos」(死の本能)というサブタイトルが添えられていることだろう。Thanatosの対になる言葉はErosである。両者は表裏一体ともとれるから今回の発表において彼が念頭に置いているのは「生あるいは死」どちらにしても不確かな実感を伴う現代の空気を写し出したいのは理解できる。
 彼がなぜここまで日の丸、それに附随する様々な被写体を追い求めるかの鍵は三島由紀夫にもあるかも知れない。しかし平澤のステートメントを見ても、あるいはいくつかの写真を見ても、それは決して右翼的価値観を賛美するものでなく、どちらかと言えば平澤自身の体験及び現在進行形のリアリティーを伴う「日本」的な何かを求めているのだと推察される。前回と同様、墓地が頻繁に登場する。特に今回は「Thanatos」を掲げている以上、確かに墓を廻れば死にまつわる考察は出来易いだろう。しかし「日本」と「死」=「墓地」なのだとしたらいささか安直な発想である。はたしてそうなのだろうか?私はこの単純な図式の奥に潜むものこそ、平澤のまだ出し得ない「何か」なのだと感じている。つまり彼自身がカメラを手に探求しているものとは、未だ消化し切れない実世界における「何か」の欠如であり、それを知り追い求めるがために自らにキーワードとなる言葉を選ぶ。それが「日本國」であり「天皇」であり「三島由紀夫」なのだろう。それぞれは一つのヒントに過ぎず、彼がここで見せようとするのはそれらの強い影響力をくぐり抜けて存在する人間の真理なのではないか。現代において人の生死が軽んじられる傾向・・・と一口に言っても、では戦争の時代、あるいは奴隷制の時代はどうだったかと言えば、もっと不公平で命の重さが分けられていたことだろう。しかしそこには残酷なまでの「生と死」が存在し、殉教、聖戦、生け贄といった「生命を賭して為される行為」が存在し、そこに準ずる精神が存在した。今では宗教的価値観の違いや近代的民主主義のお蔭で私たちはそれらの言葉を身近に感じずに済むのだが。平澤は問う。「殉教」した戦死者達は自らの命を投げうって敵を討つとき、幸せだったのではないかと。そこまでして闘う、あるいは生命を賭けられる理由が有った事を羨ましいと感じている。切腹という近代的価値観では「野蛮な」行為は、最高の責任の取り方であり、潔い男の美学の象徴でもあった。今の私たちに、形式的で無くそれらのごとく命を投げ出して訴えたい、成し遂げたいことが有るだろうか?
 決して誤解の無いように。これは戦争賛美でも、懐古主義でもない。現代に生きる一人の若者がリアルに実感している「死への渇望」である。言い換えれば「死ぬ理由への渇望」。それは翻せば「生きる理由」でもある。彼だけで無く、多くの若者(おそらく若者だけでなく)が渇いている。平澤の写真は演出が過度な場面も多い。様式美としてだけでなく、ソフトフォーカスの向こうの「何か」をクリアにできる日は、もう少し先かも知れないが・・・。
ニュートロン代表 石橋圭吾

平澤直治 HIRASAWA NAOJI

プロフィール
1975年 福島県生まれ
2001年 三人展 / cafe PAPER MOON(東京・国分寺)
     グループ展「Work in Progress」 / 大谷大学学園祭(京都)      企画展「Xmas Photo Exhibition」 / 牛角衣笠店(京都)
2002年 HP作成、web上での作品の発表をはじめる。
2003年 「Photo VISION vol.2」 / Gallery TONOMURA(大阪)
     「第8回 How are you, PHOTOGRAPHY?展」 / ギャラリーマロニエ(京都)
2004年 個展「日本國」 / neutron 5F gallery(京都)
     二人展「猫町 / 猫待ち」 / スペース ネコ穴(京都)
     『大阪写真月間
2004「写真家150人の一坪展」』 / 富士フォトサロン大阪(大阪)
     「2004 MEMBERS OF YOUNG PHOTOGRAPHERS EXHIBITION」 / 東区文化体育会館(韓国・大邱)
     「百人の写真展」 / GALLERY ississ(京都)
     グループ展「ANDBOOKS」 / gallery Pichicri & soramimibunco(大阪)
     「ARTPORTFOLIO 2004」 / art project room ARTZONE(京都)
     グループ展「EXPOLA」 / カフェバー ポコペン(大阪)
     「第9回 How are you, PHOTOGRAPHY?展」 / 同時代ギャラリー(京都)
     『「PEACE」展』 / BEATS GALLERY(大阪)
2005年 「5人のピンホールアーティスト展」 / EARKA PLUS(大阪)


平澤直治写真展 「日本國 / Thanatos」

昭和45年11月25日、自衛隊市ヶ谷駐屯地にて 三島由紀夫が日本を憂い、割腹して死んだ。
彼がその時見ていた日本、想い描いていた日本とは・・・。

彼の生涯と作品から感じるタナトス(死または死の衝動)。
それはかつての日本人が持っていた特有の性質ではないだろうか。 昭和の戦争までは確かにあった。

それが薄れた現代。 死を想うこととは遠い時代。
それでも、自分自身のタナトスが幽かに共鳴する。

日の丸は、はためかない。

昭和という時代と三島由紀夫へのレクイエム。
現代に死を想う。
終わりではなく、新たな始まりの旅路へ。

fossile_fou@hotmail.com
http://www.h4.dion.ne.jp/~oof/


 
2004.4.26-5.2 個展「日本國」 neutron 5F gallery
(展示風景)
2005 new works