neutron Gallery - 植田茂生 展 『SLOW STARTer』 - 
2004/6/14Mon - 20Sun 京都新京極 neutron 5F gallery

穴の空いた風通しのよい陶の立体作品群。作り溜めてきた作品を初個展となる今回 初めて公開。遅咲きの花はマイペースに咲くのでしょうか。





 陶芸の勉強を始めて10年も経ちました。
  その間、様々な学校に通ったりアルバイトをしたりしました。学校に通うと必ず修了展や卒業展があり、もちろん僕はそれに作品を展示しました。今回は初めて自分でギャラリーを借り個展を行います。
  正直不安はあります。10年もの間、自主的に他人に見せたい物がないというのが、自分の本来の姿だと思い込んでいましたし、その中に多少あった、自分の作りたい物が業界の求めている物と違う事も無視できるものではありませんでした。そして自分なりに考えた上、陶芸を止める決意を固める所までその不安は及びました・・(暗くてすみません!)
  しかし不安に感じたと同時に、そこまで考えが到達したならば、自分で作りたい物を作り、展示してしまおうという考えにも至りました。そこで陶芸の業界との距離があるこのニュートロンが私にはとても魅力的に映り初個展の会場に決め、お願いしました。
  今回のタイトル「スロースターター」は、決心を固めるのが遅い自分を自嘲するためと、これから他の仕事を始めた場合、作業のペースが今より更に遅くなる事を皆さんへ忠告するためでもあります。作品のイメージよりも自己紹介のためのタイトルです。というか自分では何がやりたいのか、わかってません。語れる事は何でも語りますし、見せられる物は何でも見せたいです。でも僕にもわからない事は皆さんにも一緒に考えていただきたいと思っとります。
  僕の作品には必ず”穴”が空いています。風通しを良くするためです。陶芸をするために粘土で成型する場合、常温で乾燥させる時や、焼成する時、水分を甘くみると痛い目に会います。そこで土の面積を少しでも少なくさせ、効率よく水気を逃がすためにはこの”穴”は合理的な働きをしてくれます。あと実態の無い”風”というものを表現したがる人がいますが、僕も例外ではありません。”穴”は”風”の通り道を表現したいのかも知れませんし、違うかもしれません。あるいは”穴”は関係なく、本当は”機械文明”を楽観視する事への警鐘を表現したいのかもしれませんし、逆に悲観視する方へ何かをお知らせしたいのかもしれません。全然わかりません。その答えはなるべく遠くにあって欲しいです。正直答えはどうでもいいです。そのための「スロースターター」です、ゆっくりマイペースで行きたいです。

植田茂生